【URL】
https://www.fnn.jp/articles/-/961798
【要約】
1. 寄付者への返礼品不着トラブル
長野県南箕輪村に15,000円を寄付した男性に、返礼品の梨が届かず、当初「寄付額全額返金または翌年以降の発送」としていたが、後に「返礼品相当額3,800円+迷惑料2,000円=5,800円の返金」「翌年以降の発送」「寄付キャンセル」の3択に変更。
2. 返金額が減額された理由(弁護士意見)
(1)寄付額全額の返金は違法な公金支出になる恐れがあり、住民訴訟の対象となる可能性がある。
(2)自治体には返礼品の“時価額”を賠償する責任はあるが、寄付金全額の返金義務はない。
3. 総務省の見解
返礼品は「寄付への謝礼」であり、対価ではないため、返礼品不着=寄付金返金義務とはならない。対応は自治体判断で、返礼の期限や返金方法の全国統一ルールは存在しない。
4. 梨が送れなかった理由
登録産地と実際の梨の産地が一部異なっていたため、南箕輪村が「返礼品として送付すべきでない」と判断。対象者は約3,000人。
5. 現状の対応
寄付キャンセルを選ぶ人には、各サイトを通じ速やかに返金。選択肢ごとに一定数の寄付者が分かれている。
【コメント】
1. 法令・制度面の整理が不十分なまま対応を変更した点は、自治体側のコミュニケーション不足が顕著
当初「寄付額全額返金」と通知しながら、後に「法的に返金できない」と案内を変更したことは、寄付者の信頼を損なう結果となった。住民監査請求リスクを考慮するのであれば、最初の段階で法務チェックや財務会計法上の適正性を踏まえた案内が必要であった。
2. 総務省制度上、返金義務がないことは事実だが、寄付者の納得感とのギャップが大きい
“返礼品は寄付への謝礼”という制度上の建付けは一般寄付者には理解されづらく、返礼品が届かない場合に寄付全額が戻らないことは、心理的ハードルが極めて高い。特に食品返礼は季節性・リスクがあり、自治体にはより丁寧な説明責任が求められる。
3. 産地相違の判断自体は適正で、制度遵守の姿勢としては評価できる
返礼品の産地要件違反が疑われる状況で出荷を止める判断は、地場産品基準の観点から正しく、むしろ自治体として誠実な対応。ただし、結果として3,000人規模に影響するため、リスク管理(情報提供体制、想定Q&A、返金手続きの準備)が不足していた。
4. 今後の自治体に求められるポイント
(1)返礼品調達のサプライチェーン管理(生産地・加工地の明確化)
(2)返礼品提供不能時の標準フロー整備(法務チェック、返金処理、説明文例)
(3)寄付者への説明の透明性(制度上の寄付と返礼の関係を明確化)
(4)サイト上の表示ルールの厳格運用(“信州産”の表現でも誤解が生じないよう再点検)
今回の事案は「制度の建付け(寄付)と寄付者の期待(購入に近い感覚)」のギャップが露呈した典型例であり、今後は自治体・事業者ともにトラブル発生時のリスク管理を一層重視する必要があると考えます。
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