記事紹介

2023.09.11

(NHK)洲本市のふるさと納税返礼品問題 第三者委が最終報告書

洲本市のふるさと納税について第三者委員会が最終報告をまとめました。以下記事のとおりではありますが
他の自治体でも、今回発生した事例の一部は発生していると思われます。多くの自治体にとって
今回の問題が他山の石となることでしょう。そのためにもこの報告書が熟読しておくべきです。わかりやすく
まとめています。概要版を先に読んだ方が理解が深まります。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20230907/2020023174.html

(第三者委員会資料) 
https://www.city.sumoto.lg.jp/soshiki/10/20351.html

洲本市ふるさと納税問題第三者調査委員会
最終報告書 概要版
令和 5 年 9 月
委員長 河瀬 真 (河瀬法律事務所 弁護士)
委員(委員長職務代理者) 上村敏之 (関西学院大学経済学部 教授)
委員 家木祥孝 (兵庫法律センター法律事務所 弁護士)
専門委員 池田 学 (RSM 清和監査法人 公認会計士)
1.最終報告書の構造
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2.第 2~4 章の概要
第2章 ヒアリング等により明らかになった問題点、課題等
2-1.ふるさと納税制度にかかる規律の概要、および洲本市におけるふるさと納税の経過
・(平成 27 年度~平成 28 年度)洲本市がふるさと納税制度に力を入れ始め、当時財政課の職員であっ
た X が、所掌事務外であるにも関わらず、ふるさと納税事務に積極的に携わるようになり、返礼品 PR
の強化等を行った。寄附件数と寄附受入額が飛躍的に増加。
・(平成 29 年度~令和 3 年度)魅力創生課が新設された。X が魅力創生課課長補佐として配置され、平
成 30 年 4 月 1 日付けで魅力創生課長となった。X 元課長の指揮の下で積極的な返礼品等プロモーショ
ンが展開された。寄附件数と寄附額は顕著に増大。
2-2.洲本市のふるさと納税事務運用における法定返礼品基準(3 割基準、地場産品基準)、募
集適正基準(特に 5 割基準)違反の概要
2-2-1.3 割基準違反
・当調査委員会は、令和 4 年 4 月 25 日時点の全返礼品 1,195 品のうち 127 品が 3 割基準違反と認定し
た。
・温泉利用券は調達に要する費用として計上すべき費用を他の費用(シティプロモーション協力手数料)
として支出していたことを認定した。商品代金を引き下げ、送料に付け替える操作が行われたケースも
判明した。3 割基準違反を認識した上で回避しようとするものであり、法令違反の認識を持ちつつ行っ
ていたと評価しうる。洲本市が積極的に関与しなければ実行できない法令違反行為であり、悪質性は著
しい。
・「おまけ」を付したが調達費に計上せず、3 割基準違反を引き起こしかねない不適切な取扱が漫然と続
いていた。返礼品の調達費に含まれるべき消費税を計上していなかったケースもある。牛一頭買いにつ
いては、返礼品の商品代金が 0 円になることから、正確な調達費の算定が困難になり、3 割基準違反で
あると認定。地方団体が牛肉の在庫を抱える取扱をする判断に問題があった。
2-2-2.地場産品基準違反
・当調査委員会は、令和 4 年 4 月 25 日時点の全返礼品 1,195 品のうち 98 品が地場産品基準違反と認定
した。
・本来洲本市産である必要があるが、淡路島産ですらなかった事例もあった。このようなケースが散見
される主な理由として、洲本市側の働きかけがあった。参加事業者へのアンケートによれば、当時の担
当者が「淡路島産」であれば良いとの説明をしたことが認められた。隣接他市のブランド産品を返礼品
として取り扱っていたケースも存在した。
2-2-3.5 割基準違反
・当調査委員会は、令和 4 年 4 月 25 日時点の全返礼品 1,195 品のうち 221 品が 5 割基準違反であると
認定した。調達費、送料および梱包費の合計額が、寄附額の 5 割を超過していたかで判断した。人件費
やポータルサイト手数料を含めると、さらなる 5 割基準違反が認定される可能性がある。送料および梱
包費が高額に設定されていたことも原因である。
2-3.ふるさと納税事務に関連した違法または不適切な事務処理
2-3-1.おせち料理について
・洲本市は令和 3 年 10 月 1 日付けでおせち料理 2,000 セットを発注した。返礼品やコロナ禍における
医療従事者へのお礼として寄附することを目的としていたが、X 元課長が単独で発注先企業と交渉し、
魅力創生課内で実質的な討議はなかった。上司の Y 前部長の決裁はあるが、形骸化していた。
・おせち料理の契約金額 4,800 万円は、議会の議決が必要な 2,000 万円を大きく超過していたが、議会
の議決は経ていなかった。契約書も作成されておらず、数量、単価、合計金額が記載された申込書が存
在するのみであった。しかも申込書には洲本市の公印ではなく、魅力創生課が独自に製作した浸透印が
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押印されていた。おせち料理は地場産品である必要があり、その他納品時期や保管、発送等の詳細につ
いて後に疑義を残さないよう契約条件を定めておく必要は高かったが、契約書が作成されておらず、製
品が定められた納期までに納品されたか否かの検証が困難である。
・発注したおせち料理がどのように使われたかは極めて不透明で、多数のおせち料理が公益性および合
理性が不明のまま、個人や参加事業者等に無償配布された他、発送先が解明できないものも多数に上る。
そもそも地方団体は公益上必要がある場合でなければ財産を他に寄附することは許されない。また、洲
本市の財物を正当な対価なく譲渡する場合は少なくとも議会の議決が必要だが、議会の議決は経ていな
かった。
2-3-2.玉ねぎスープについて
・洲本市は、令和 4 年 4 月 1 日付けで 1 本あたり単価 54 円の玉ねぎスープ 632,250 本、3,414 万 1,500
円を購入したが、議会の議決は経ていなかった。Y 前部長の決裁は経ているが、決裁前に X 元課長が事
実上発注して生産が行われており、決裁は形骸化していた。随意契約である合理的な理由も不明確であ
った。
・玉ねぎスープは「おまけ」として温泉利用券の発送に同封され、3 割基準違反を引き起こしただけで
なく、洲本市が無償で一部の寄附者に玉ねぎスープを贈与する公益上の必要性は認めがたい。洲本市の
財物を交付するならば議会の議決が必要だが、議決は経ていない。
・大量の玉ねぎスープの在庫が洲本市の倉庫に無造作に保管され、誰が持って行っても分からない管理
状況であったなど、在庫管理にも大きな問題があった。
2-3-3.温泉利用券、商品券、クオカード等の管理について
・温泉利用券は洲本市が印刷し発行していたが、財政上の手当その他ルールは一切定められず、発行枚
数の上限の限定や、外部に持ち出す枚数やその方法も一切定められていなかった。内部手続や議会のチ
ェックを経ることなく、洲本市が債務を負担することが事実上許容されているのが実情であった。
・多数の温泉利用券が寄附者に「おまけ」として同封され、あるいはイベント参加者等に配布されてい
た。行政文書たる管理簿は作成されておらず、魅力創生課職員ですら正確に把握できていなかった。実
態は X 元課長が「おまけ」の送付先を決めており、課内での協議や一定の基準はなかった。また、洲本
市の財物を正当な対価なく譲渡する場合は少なくとも議会の議決が必要だが、議会の議決は経ていなか
った。
・同様の問題は、商品券、クオカード等の管理、処分にも存在した。
2-3-4.牛一頭買いについて
・洲本市は 65.5 頭の牛一頭買いを行っていた。一頭買いにあたって課内での実質的な協議はなく、X 元
課長が参加事業者と協議して決めた。購入した牛の品質の確認、管理はできておらず、洲本市を一度も
経由せず地場産品基準に反するものも存在した。一頭当たりの金額の正当性は不明であり、調達費の正
確な算出ができず、3 割基準を満たすのかの検証が不可能であった。
2-3-5.一部参加事業者に対する通常より明らかに高額な送料、梱包費の支払い(後述)
2-3-6.市民寄附者に対する返礼品送付(後述)
2-3-7.旧東京アンテナショップ、S ブリックに関する問題
・洲本市のふるさと納税に関するプロモーション事業として、平成 31 年 1 月に開設した旧東京アンテ
ナショップ、および令和 3 年 4 月に運営を開始している S ブリックのリノベーション事業(赤レンガ建
物リノベーション事業)について、事業者の選考課程が不明瞭であり、特定の事業者への随意契約など、
洲本市内の事業者に公平に機会が与えられているかが不明であった。
2-3-8.過剰労働の放置
・ふるさと納税事務は年末に駆け込みの申込者が増えるため、12 月、1 月の事務作業が極めて多い。寄
附額が大幅に増加した令和 2 年 12 月、1 月の時間外労働時間はすさまじく、時間外労働時間が 200 時
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間を超える職員が存在した。しかしながら、業務の一部外部委託などの措置は十分検討されなかった。
2-3-9.問題発覚後の洲本市の対応
・温泉利用券の問題が発覚し、総務省から報告を求められる段階に至っても洲本市の対応は非常に悪く、
公正な見地から客観的に調査し報告する姿勢が欠けていた。温泉利用券の調達費について、「温泉旅館連
盟との協議により 1 枚あたり 5,500 円で計算し 3 割基準を満たしている」「調達とは異なるシティプロ
モーション協力事務手数料は事務手数料等の 2 割に含め 5 割基準の範囲内である」旨の報告を行ってい
たが、それらを確認できる資料は存在しなかった。なお、旅館連盟とも実質的な協議がなかったことも
ヒアリングによって判明した。
・平成 31 年 4 月 1 日付け「魅力創生課・会議・協議・打合せ・連絡調整等記録票」には、シティプロ
モーション協力事務手数料の単価目安の協議を温泉旅館連盟との間で行い、各事務の単価が記載されて
いるが、温泉利用券の問題発覚後に事後的に作成されている。温泉旅館連盟発行の令和 3 年 4 月 1 日付
け見積書を、温泉利用券問題発覚後に温泉旅館連盟側に依頼して作成させたこともヒアリングによって
判明した。前者は虚偽の公文書を作成したことになりかねず、後者は外部の団体まで巻き込んで偽装を
している点で極めて悪質と言える。
2-4.違法・不適切な事務処理が行われた背景事情・根本的な問題点(ヒアリング、アンケー
トの調査結果から)
2-4-1.市幹部のコンプライアンス意識の低さ
・市長、副市長ら、幹部(以下、「市幹部」という)は、コンプライアンス意識が低く、法令遵守面での
リーダーシップが欠如していた。市幹部らは、洲本市の寄附受入額の増加を歓迎し、X 元課長を評価し、
X 元課長の方針、手法を無条件に容認していた。このような市幹部の態度が、X 元課長の増長を招き、
他の魅力創生課員を追随せしめ、様々な違法、不適切な事務処理につながって行ったことは否めない。
・当調査委員会が調査の途上にあっても、市幹部はこれまでのふるさと納税事務執行の在り方を評価し、
いわば法令遵守よりも寄附受入額の増大を優先するかのような姿勢を維持していると認めざる得ない
事例に遭遇した。指定取消後、洲本市は「ふるさと産品 EC サイト出品支援事業」を計画していたが、
通販担当者は X 元課長が指名されていた。この事業は、極めて多岐にわたる問題を抱えた洲本市のふる
さと納税業務の構造を、指定取消期間中も温存しようとするものにほかならず、同事業を容認、推進し
ようとした市幹部の認識の甘さ、法令遵守意識の低さが顕著に表れたものにほかない。当調査委員会は、
令和 4 年 11 月 29 日付けの申入書を発し、慎重な対応を求めたところ、同事業は中止された。
・一般の職員は、X 元課長の業務の進め方や手法に疑問を感じても、市幹部が認めているから仕方ない
という無力感を持つようになり、市幹部に認められている X 元課長からの報復を恐れ、X 元課長には何
も口出しができない状態に陥っていたことがヒアリングから認定できた。
2-4-2.元課長への過度な権限集中
・ふるさと納税に関する業務を担う魅力創生課は、企業誘致、定住促進、シティプロモーションに関す
る業務も所掌し、X 元課長にこれらの業務の決定権限が集中した。ふるさと納税業務とシティプロモー
ション業務のいずれも同じ課が担当することで、温泉利用券の問題が引き起こされたことを考えるなら
ば、隣接するこれらの業務が単一の課の担当となることの弊害が大きかった。
・シティプロモーション活動によるフェアに参加する事業者は、事実上特定の参加事業者に限られ、公
平性に欠けていた。特定の職員と参加事業者との癒着的な構造を招き、不正の温床になりかねないこと
に注意する必要がある。
・「寄附金を集める業務」と「寄附金を使う業務」の双方の決定権限が X 元課長に実質的に帰属してい
た。このことは、X 元課長の発言権を強める結果を生んだ。ふるさと納税寄附金を財源とする予算執行
の決裁書面には、所掌事務外にもかかわらず、X 元課長の同意判の押印欄まで設けられていたことがヒ
アリングから認定された。
・X 元課長に権限が集中する過程で、幅広い魅力創生課の業務について X 元課長だけが計画を把握し、
課員や Y 前部長さえも計画を把握できない状況が生じた。X 元課長の独断専行的な業務遂行に問題を感
じていても、誰も口出しができない状況に陥った結果、種々の法令違反等の問題が容認、放置されてき
たと推測される。
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2-4-3.内部統制のシステムの機能不全
・各種違反が生じた背景事情には内部統制システムの機能不全が認められる。
・X 元課長の上司である Y 前部長の決裁は有効に機能しなかった。決裁制度は機能不全であった。
・会計課による魅力創生課の支出へのチェックが有効に機能しなかった。
・一部の職員はいわゆる過労死ラインを超える残業時間が発生し、異常な勤務状態になっていたが、人
事部門は人員配置や業務改善に取り組むべきであった。
・各部門における担当者が自身の役割において果たすべき責任を果たしていなかった。その理由には、
多額の寄附額を「獲得」してくる魅力創生課への忖度や法令遵守の意識の低さが挙げられる。
2-4-4.事務フローの不存在および課員間での情報共有がなかったこと
・各種違反を助長した要因として、魅力創生課における事務フローの不存在および課員間での情報共有
がなかったことが挙げられる。魅力創生課には、事務マニュアルや事務フローが存在していなかった。
各課員は X 元課長から指示された事務をこなしている状況であった。課員間での事務に関する情報共有
がなかった。
第 3 章 返礼品等の各種調査の結果報告
3-1.返礼割合 3 割以下基準および募集適正基準(経費総額 5 割以下基準等)の適合性調査
・調達費や梱包費の支払いは参加事業者からの申請・請求によるものだが、その金額に対するチェック
は徹底されていなかった。特に、梱包費は金額の妥当性を確認することが難しく、先方の請求書を受け
入れている状況であった。過大に請求していた参加事業者に合計 9,000 万円を返還させた事例もあった。
・商品記事フォームは決裁の対象外となっていたため、返礼品情報登録のチェックは行われていなかっ
た。商品代金、梱包費等が変更の場合の商品記事フォームについても決裁手続きは行われていなかった。
制度開始当初からの参加事業者の商品記事フォームが存在しないケースも散見された。
・参加事業者からの請求書の様式が一定でないため、正確なチェックに煩雑性が伴っていた(特に紙に
よる請求書のみを提出する場合)。
・総務省への提出書類に調査結果と整合していない点が散見された。
3-2.地場産品基準の適合性調査
・令和 4 年 4 月 25 日時点で返礼品を提供していた全参加事業者を対象に実施した「地場産品に関する
調査」、令和 5 年 8 月 31 日時点で 103 の参加事業者より回答を得た(回答率 89.6%)
地場産品基準違反内訳
地場産品基準および 3 割基準に違反 3品
地場産品基準および5割基準に違反 23 品
地場産品基準のみ違反 72 品
① 111品 返礼割合3割超
② 16品
牛一頭買いの為、請求書から調達費が算定出来ない返礼品(牛一頭を
調達費として支払っており、各返礼品の調達費としては不明である
為、商品記事フォームより確認)
③ 174品 返礼割合5割超(調達費としては3割以内であるが、梱包費・送料
(東京抽出)を含めると5割超)
④ 759品 返礼割合3割以下及び5割以下
⑤ 135品 商品記事フォーム等より確認(請求無し)
計 1,195品
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地場産品基準違反内訳
合計 98 品
・請求書に記載の住所が洲本市以外であり、洲本市に拠点がないと想定される参加事業者が散見された。
・牛一頭買いの請求書にある個体識別番号を確認したところ、洲本市を全く経由していないケースがあ
り、地場産品基準に照らして疑義がある。
・牛一頭買いの返礼品は、一頭買いした牛肉をどのようにパッケージして寄附者に発送したのか、どれ
ほどの牛肉が在庫として保管されていたのかが不明であり、調達費の正確な計算や返礼品が確実に届い
ているかの確認ができない状況であった。
・牛一頭買いの個体識別番号によれば、65.5 頭分の請求のうち、27 頭に地場産品基準違反があった。な
お、牛一頭買いに関わる複数の参加事業者は、同一経営企業グループであり、請求はそのうち 1 つの参
加事業者のみから行われていた。
3-3.地場産品基準の適合性を確保するための取組の調査
・参加事業者に対する無記名式アンケートの結果。令和 4 年 11 月 15 日に発送し、令和 5 年 8 月 31 日
時点で 68 の参加事業者より回答を得た(回答率 42.2%)
質問事項 はい いいえ
(ア)返礼品等提供事業者として市に参加申込みを行った際に、市職
員から、国が定めた返礼品等提供に関するルール(返礼割合3割
以下基準・地場産品基準)の説明、資料の提示等はありましたか?
42 18
(イ)市職員から、国が定めた返礼品等提供に関するルールの違反に
ついての注意喚起、資料の提示等はありましたか?
10 44
(ウ)返礼品等提供事業者としての市の承認を受けるに際して、市職
員から、何らかの指示、働きかけ等はありましたか?
11 47
(エ)返礼品等の商品代金、運送料、梱包費用等について、市職員か
ら、何らかの指示、働きかけ等はありましたか?
16 37
地場産品基準違反
3割基準違反 5割基準違反
72品
(6.03%)
23品
2品
45品
1品
79品 151品
(6.61%) (12.63%)
基準適合 基準違反 373品(31.21%)
822品
(68.78%)
地場産品基準アンケート調査
の未回答を含む
総返礼品数 1,195品(令和4年4月25日時点)
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3-4.ふるさと納税関係業務における対外的行為調査
3-4-1.温泉利用券の管理に関する調査
・温泉利用券には使途不明があった。温泉利用券の発送時に「おまけ」として追加同封、イベント等で
の景品利用、地元産品事業者応援企画(通販)の配送商品に同封等が行われていた。また婚活イベント
参加者の宿泊費を温泉利用券にて支払っていた。洲本市が温泉利用券によって代物弁済を行うために
は、議会による議決を経る必要があるが、議会には諮られていない。
3-4-2.返礼品の送料および梱包費に関する調査
・一部の参加事業者の請求明細にある送料について、商品名から梱包サイズを想定した送料を試算した
ところ、過大請求を窺わせる状況となっていた。梱包費についても確認したところ、他の参加事業者の
梱包費よりも大きなものになっていた。送料と梱包費の合計が商品代金を超過しているものが相当件数
ある。商品代金を安く設定し、代わりに送料および梱包費を過大に設定することで、寄附を多く募るこ
とが可能となる仕組みとなっていた。
3-4-3.クオカードの管理に関する調査
・クオカードは返礼品ではないが、寄附者へのアンケートまたは温泉利用券発送時に「おまけ」として
同封されていた。現在、300 円券 19,049 枚および 500 円券 40,272 枚、合計 2,585 万円のクオカードが
会計課の鍵付保管庫に保管されている。会計課に保管されるまでは、本庁舎倉庫に保管され、倉庫に入
室した者が無断で持ち出しても分からない状況であった。受払管理がなされておらず、取扱者が不正な
扱いをしても容易には判明しない状況であった。
・アンケート回答者だけでなく、寄附者全員に配布されていた。
3-4-4.商品券の管理に関する調査
・商品券(ふるさと洲本応援商品券)は返礼品として登録されていたが、温泉利用券発送時の「おまけ」
として同封されていた。現在、15,449 枚が会計課の鍵付保管庫に保管されている。会計課に保管される
までは、本庁舎倉庫に保管され、倉庫に入室した者が無断で持ち出しても分からない状況であった。受
払管理がなされておらず、取扱者が不正な扱いをしても容易には判明しない状況であった。
・商品券の換金請求書によれば、某事業者からの請求額が多額であった。当該商品券を利用し、魅力創
生課にて使用するプリンターおよび X 元課長が使用するパソコンが購入された。洲本市が代物弁済を行
うには、議会による議決を経ることが必要であるが、議会には諮られていない。
・換金請求書にはどのようなものを販売したのかの明細が添付されず、番号管理がなされていない。
3-4-5.おせち料理の管理に関する調査
・おせち料理は返礼品として登録されていたが、ふるさと納税の返礼以外の用途に利用されていたこと
が確認された。
・大量のおせち料理の発注が、東京に本社を設置する H 社に対して行われていた。おせち料理の製作に
ついては、大阪に本社を設置する I 社が H 社の委託先である J 社により再委託を受けて行っていた。
・洲本市と H 社との契約は締結されていなかった。申込書には申込者名に市長、担当者名に X 元課長
の氏名が記入されていたが、洲本市の公印は使用されておらず、魅力創生課が独自に製作した浸透印が
押印されていた。
・おせち料理の発注が 2,000 万円を超過していたが、議会の議決を経ていなかった。令和 5 年 2 月 20
日に議会の追認議決がなされた。
・H 社からの請求書の記載内容、発注に関する決裁文書、支出負担行為書に添付された X 元課長が作成
した送付明細の内容が相違しており、送付等不明のものが半数近くある。洲本市が公金を用いた発注し
たおせち料理の大半が、どのように使用されたか判明しない状況になっている。
・なお、新たな返礼品開発のヒントや都市部住民の好みやニーズを知ってもらうことを理由として、82
参加事業者に贈られているが、送付先には食品を扱わない参加事業者も含まれており、送付先の選定に
合理性はない。一般財団法人五色ふるさと振興公社、地方団体、NPO 法人にも贈られている。
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3-4-6.玉ねぎスープの管理に関する調査
・玉ねぎスープは返礼品に登録され、温泉利用券発送時に「おまけ」としても同封されていた。発注が
2,000 万円を超過するにも関わらず、議会の議決を経ていなかった。令和 5 年 2 月 20 日に議会の追認
議決がなされた。
・令和 4 年 12 月 13 日時点で、467,800 本の玉ねぎスープが庁舎に保管されていたが、庁舎に入室した
者が無断で持ち出しても分からない状況にあった。賞味期限は残り半年ほどになっていたが、フードバ
ンクへの寄附および洲本市のアンテナショップでの配布等により、現時点で洲本市は保有していない。
3-4-7.市民寄附者への返礼に関する調査
・洲本市民からの寄附に、ふるさと納税の返礼品を提供することは禁止されているが、返礼品を提供し
ていることが確認された。窓口に現金を持参している洲本市民に対して、返礼品を提供している事例も
あった。
3-4-8.ふるさと産品発信事業費に関する調査
・H 社との企画「淡路島・洲本市特産品生産者応援企画 おうち de グルメ」と称した通信販売では、
商品に温泉利用券が同封されていた。また、参加事業者のハンバーグおよびワカメなどの「おまけ」が
同梱されている注文があった。当企画の実施に関する決裁文書は確認できなかった。
3-4-9.職員の従事状況に関する調査
・ワンストップ特例制度適用申請処理が多くなる 12 月および 1 月の同業務に従事した職員の勤務状況
を確認した。年末年始の休日において、一般職の職員が毎日 8 名他部署から応援で確認処理を行ってい
た。令和 2 年 12 月には 200 時間を超過する者が 3 名、令和 3 年 12 月には 100 時間を超過する者が 1
名いた。
3-4-10.その他
・その他、温泉利用券発送時の「おまけ」として、お食事券、コーヒー・洋菓子セット、淡路島産銘菓
セットが同封または別送していることが判明した。
第 4 章 各種データ分析の結果報告
4-1.寄附総額、費用、参加事業者への支払の推移
・洲本市のふるさと納税の寄附総額と費用が急増した。特徴的な動きとして、同一経営企業グループへ
の支払のシェアが急激に拡大した。図 4-1(最終報告書 p.79)、図 4-2(最終報告書 p.80)を参照。
4-2.参加事業者から請求があった送料が通常考えられる送料より大きいケースが存在
・参加事業者の請求額データを元に、請求があった送料と、個々の返礼品を送付先の都道府県に配送事
業者の通常の送料で送った場合の試算送料を比較した。参加事業者から請求があった送料が通常考えら
れる送料より大きいケースが存在していた。図 4-3(最終報告書 p.81)を参照。
4-3.商品代金と送料・梱包費の不適切な付け替え
・参加事業者の商品記事フォームと請求書データを元に、比較可能な商品について、3 割基準と 5 割基
準を試算した。登録時に 3 割基準違反となる商品が存在し、請求時に商品代金を引き下げ、送料に付け
替える操作が行われていた。寄附金額を引き下げるのは、ふるさと納税サイトにおけるバーゲンセール
に合わせたためだと考えられる。表 4-2(最終報告書 p.84)を参照。
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4-4.ふるさと納税業務にともなう異常な勤務状態
・特に、年末年始には、確定申告が不要になるワンストップ特例制度への対応のため、魅力創生課の職
員約 10 人とアルバイトに加え、他課より応援が必要だった。
4-5.ふるさと納税返礼品に係る洲本市の債務額(温泉利用券、ふるなびカタログポイント、
返礼品未選択者)について
・①温泉利用券債務額:7億 3,030 万円、②ふるなびカタログポイント債務額:6,390 万円、③返礼品
未選択者債務額:771 万円、合計は 8 億 191 万円(令和 5 年 8 月 15 日現在)となる。
・洲本市のケースは、温泉利用券の発行主体は洲本市である。そのため、寄附者による寄附が行われ、
温泉利用券が洲本市から発送される時期と、寄附者が温泉利用券を利用して洲本市が温泉旅館連盟に経
費を支払う時期が、年度をまたぐ場合に債務が発生する。図 4-5(最終報告書 p.87)を参照。
4-6.返礼品をともなうふるさと納税制度への復帰時期の検討について
・ふるさと納税制度は指定制度であり、指定を受けようとする地方団体は、毎年、総務大臣に申出書を
提出する。通常の申出期間は 7 月中だが、指定を取り消された地方団体は指定取消日から起算して 2 年
を経過する日(洲本市の場合は令和 6 年 5 月 1 日)の初日から末日までの間(洲本市の場合は令和 6 年
5 月 1 日~31 日)に、1 回に限って申出書を提出できる。
・しかしながら、温泉利用券の消費による経費が、令和 6 年度は 3.14 億円、令和 7 年度は 2.22 億円、
令和 8 年度は 0.16 億円と予測され、これらは 5 割基準の経費に含まれることから、洲本市がふるさと
納税制度に復帰したとしても、寄附総額の状況によっては、再度、ふるさと納税の指定を取り消される
可能性がある。表 4-4(最終報告書 p.88)を参照。
・過去にふるさと納税制度から除外された市町のデータより、洲本市の制度復帰後の寄附総額を予測し
ても、令和 6 年度は最大でも 10.91 億円、令和 7 年度は最大でも 17.88 億円となった。すなわち、制度
に復帰しても、直ちに寄附総額が回復する見込みは小さいと考えられる。表 4-5(最終報告書 p.89)を
参照。
・5 割基準の割合の計算は 4 月 1 日から 3 月 1 日までが算入されるが、令和 6 年度においては、少なく
とも 4 月の 1 か月間は、寄附額を集めることは不可能である。図 4-6(最終報告書 p.90)を参照。
・さらに、未利用の温泉利用券の利用は、寄附収入がゼロであるにも関わらず、経費の支払が発生する
ため、3 割基準にも違反する可能性がある。図 4-7(最終報告書 p.91)を参照。
4-7.返礼品をともなうふるさと納税制度への復帰に必要な寄附総額の推計
・5 割基準をクリアするために、どの程度の寄附総額を集める必要があるのかを推計した。5 割基準の
経費としては、調達費、梱包費、送料、温泉利用券経費、ポイント等消費による経費、ポータルサイト・
クレジット手数料、人件費、委託費を想定した。架空の返礼品を想定し、ケース 1(3 割基準の割合 30%)、
ケース 2(3 割基準の割合 25%)、ケース 3(3 割基準の割合 15%)を仮定した(表 4-7:最終報告書
p.92)。5 割基準の割合の計算上の仮定は表 4-8(最終報告書 p.93)と表 4-9(最終報告書 p.93)にま
とめた。分析結果は図 4-8(最終報告書 p.94)である。
・温泉利用券による経費 3.14 億円(令和 6 年度の想定)が存在する場合、80 億円の寄附総額を集め、
3 割基準の割合を 15%(ケース 3)に抑制しなければ、5 割基準に違反することが示された。温泉利用
券による経費が存在しなくても、3 割基準の割合が 30%(ケース 1)または 25%(ケース 2)であれば、
5 割基準に違反する。
・したがって、温泉利用券の消費が想定よりも進まないのであれば、再びふるさと納税制度の指定を取
り消される可能性が高い。
10
3.第 2~4 章の各節の内容と第 5 章の問題点の関係性
第2章 ヒアリング等により明らかになった問題点、課題等
第 5 章の問題点との関係性
問題
点 1
問題
点 2
問題
点 3
問題
点 4
問題
点 5
問題
点 6
問題
点 7
問題
点 8
問題
点 9
2-1.ふるさと納税制度にかかる規律の概要、および洲本市におけるふるさと納税の経過 ● ●
2-1-1.ふるさと納税制度に伴う法規制の展開 ● ●
2-1-2.洲本市におけるふるさと納税事務の実施、推移について
2-2.洲本市のふるさと納税事務運用における法定返礼品基準(3 割基準、地場産品基準)、募集適正基
準(特に 5 割基準)違反の概要 ● ● ●
2-2-1.3 割基準違反 ●
2-2-2.地場産品基準違反 ●
2-2-3.5 割基準違反 ●
2-3.ふるさと納税事務に関連した違法または不適切な事務処理 ● ● ● ● ● ● ●
2-3-1.おせち料理について ● ●
2-3-2.玉ねぎスープについて ● ● ●
2-3-3.温泉利用券、商品券、クオカード等の管理について ● ● ●
2-3-4.牛一頭買いについて ●
2-3-5.一部参加事業者に対する通常より明らかに高額な送料、梱包費の支払 ●
2-3-6.市民寄附者に対する返礼品送付 ●
2-3-7.旧東京アンテナショップ、S ブリックに関する問題
2-3-8.過剰労働の放置 ●
2-3-9.問題発覚後の洲本市の対応 ●
2-4.違法・不適切な事務処理が行われた背景事情・根本的な問題点(ヒアリング、アンケートの調査結
果から) ● ● ●
2-4-1.市幹部のコンプライアンス意識の低さ ● ●
2-4-2.元課長への過度な権限集中 ● ● ●
2-4-3.内部統制のシステムの機能不全 ● ●
2-4-4.事務フローの不存在および課員間での情報共有がなかったこと ● ● ●
11
第 3 章 返礼品等の各種調査の結果報告
第 5 章の問題点との関係性
問題
点 1
問題
点 2
問題
点 3
問題
点 4
問題
点 5
問題
点 6
問題
点 7
問題
点 8
問題
点 9
3-1.返礼割合 3 割以下基準および募集適正基準(経費総額 5 割以下基準等)の適合性調査 ● ● ●
3-2.地場産品基準の適合性調査 ● ●
3-3.地場産品基準の適合性を確保するための取組の調査 ●
3-4.ふるさと納税関係業務における対外的行為調査 ● ● ● ● ● ● ●
3-4-1.温泉利用券の管理に関する調査 ●
3-4-2.返礼品の送料および梱包費に関する調査 ●
3-4-3.クオカードの管理に関する調査 ● ●
3-4-4.商品券の管理に関する調査 ● ●
3-4-5.おせち料理の管理に関する調査 ● ●
3-4-6.玉ねぎスープの管理に関する調査 ● ● ●
3-4-7.市民寄附者への返礼に関する調査 ●
3-4-8.ふるさと産品発信事業費に関する調査 ●
3-4-9.職員の従事状況に関する調査 ●
3-4-10.その他 ●
第 4 章 各種データ分析の結果報告
第 5 章の問題点との関係性
問題
点 1
問題
点 2
問題
点 3
問題
点 4
問題
点 5
問題
点 6
問題
点 7
問題
点 8
問題
点 9
4-1.寄附総額、費用、参加事業者への支払の推移 ●
4-2.参加事業者から請求があった送料が通常考えられる送料より大きいケースが存在 ● ●
4-3.商品代金と送料・梱包費の不適切な付け替え ● ●
4-4.ふるさと納税業務にともなう異常な勤務状態 ●
4-5.ふるさと納税返礼品に係る洲本市の債務額(温泉利用券、ふるなびカタログポイント、返礼品未選
択者)について ● ●
4-6.返礼品をともなうふるさと納税制度への復帰時期の検討について ● ● ●
4-7.返礼品をともなうふるさと納税制度への復帰に必要な寄附総額の推計 ●
12
4.問題点の整理と政策提言(詳細は第 5 章を参照)
ここでは、洲本市のふるさと納税問題の問題点を整理し、政策提言を提示する。なお、洲
本市のふるさと納税問題を踏まえ、洲本市への政策提言に加えて、ふるさと納税制度そのも
のへの政策提言も示す。

問題点 1)3 割基準に関わる問題と政策提言
(1)寄附を増やすため、見かけ上の調達費を減額し、送料や梱包費を実際の金額よりも高く設定していた。
(2)ふるさと納税サイトのバーゲンセールに合わせる形で、寄附額を恣意的に減額していた。(3)寄附額、
調達費、梱包費、送料のデータをリアルタイムで把握していなかった。(4)参加事業者に対して、3 割基
準の存在を明確に説明していなかった。(5)以上の結果として、3 割基準違反が続出した。
【提言 1】梱包費は寄附額の 3 割以内とされる調達費に含めるべき。
【提言 2】送料は市が運送業者を指定して実費精算とするべき。
【提言 3】寄附額、調達費、送料の変更について、ICT を活用して記録を残し、調達費が寄
附額の 3 割を超えないよう、モニタリングを実施するべき。
【提言 4】参加事業者に対して、3 割基準について丁寧に説明する体制を整えて実施するべ
き。
問題点 2)地場産品基準に関わる問題と政策提言
(1)参加事業者に地場産品基準を明確に説明していなかった。例えば、淡路島の産品ならば認められる
という説明を受けた、または、そのような間違った認識を持つ参加事業者が散見された。(2)現行の募
集要領に「洲本市と縁のある」「洲本市に縁のある」との表記があり、地場産品基準違反を誘発する、ま
たは、恣意的に地場産品基準を拡大解釈する土壌があった。(3)以上の結果として、地場産品基準違反
が続出した。
【提言 5】現行の募集要領にある「洲本市と縁のある」「洲本市に縁のある」表記を削除し、
洲本市内の産品を扱うことができる事業者に限定することを明記するべき。
【提言 6】参加事業者に対して、地場産品基準について丁寧に説明する体制を整えて実施す
るべき。
【提言 7】参加事業者には、洲本市産(市内町名まで)であることを明記した「商品ラベル」
や「商品記事フォーム」などを提出させることを原則とするべき。
【提言 8】地場産品基準について、参加事業者の定期報告を義務化するべき。
【提言 9】牛肉の返礼品は個体識別番号の明示を原則必須とし、牛トレーサビリティに基づ
く個体識別番号による地場産品基準の検証体制を確保するべき。
問題点 3)利用券と在庫に関わる問題と政策提言
(1)市は返礼品に活用する各種利用券(温泉利用券、商品券など)を発行していた。(2)なかでも温泉利用
券の発送は市の職員が行っていたが、発送業務は職員の本来業務ではない。(3)市が産品などを直接購入
し、または各種利用券を自ら発行することで在庫を抱えていた(例えば、一頭買いした牛(枝肉のみ)、
おせち料理、玉ねぎスープ、温泉利用券、お食事券、クオカード、商品券など)。(4)これらの在庫管理は
ずさんで、どのように処分されたのかが不明なものが多く、玉ねぎスープなどのように過大な在庫を抱
える場合もあった。
13
【提言 10】返礼品に関して、市による各種利用券の発行を禁止するべき。
【提言 11】返礼品に関して、市が一切の産品の在庫を抱えることを禁止するべき。
問題点 4)「おまけ」に関わる問題と政策提言
(1)各種利用券や一部の財を「おまけ」として追加していた。(2)「おまけ」によって結果的に 3 割基準に
違反する危険性も指摘される。(3)そもそも「おまけ」を寄附者は申し込んでおらず、「おまけ」の調達が
公金を使って行われている点でも問題がある。(4)「おまけ」は寄附額の多い寄附者を対象に主に実施さ
れたと見られるが、公平性の観点からも問題がある。(5)「おまけ」を入れる業務は市の職員によって行
われたが、「おまけ」の封入作業は市の職員の本来業務とは考えにくい。(6)市の財産を「おまけ」として
返礼品に追加すること(譲与)には、議会の議決が必要であるが、その前提となる公益上の必要性が存
在するかどうかは疑わしく問題がある。
【提言 12】「おまけ」を禁止するべき。
問題点 5)業務体制に関わる問題と政策提言
(1)寄附額、調達費、梱包費、送料のデータの把握、請求書のチェックなど、適切な発注管理ができてい
なかった。(2)業務マニュアルがなく、属人的な経験によって業務が実施されていた。(3)市の職員が温泉
利用券の発送業務を行う、「おまけ」を封入するなど、適切な業務体制ではなかった。(4)返礼品数の増加
にともない、クレーム対応が増加し、市の職員での対応が困難になっていた。(5)年末年始のワンストッ
プ特例制度への対応など、異常な勤務状態が見られた。(6)市のふるさと納税業務における ICT 化と参
加事業者の ICT 化が遅れていたことが、市の職員の業務を増やした。(7)一部の参加事業者を優遇した
ことは、公平性を重視すべき行政のあり方として問題があった。
【提言 13】コンサルタント会社による業務分析を行い、マニュアル作成、ICT 活用、業務
のアウトソーシング化を実施するべき。
【提言 14】参加事業者にもある程度の ICT 対応を求め、業務を効率化するべき。
【提言 15】返礼品をともなうふるさと納税制度を再開する上では、これまでの参加事業者
との関係はリセットし、参加事業者を再公募するべき。
【提言 16】不適切な参加事業者の処分規則を設定するべき。
【提言 17】職員の研修体制を整えて実施するべき。
問題点 6)会計と監査に関わる問題と政策提言
(1)ふるさと納税関連の支出について、企画情報部魅力創生課が独断で決裁をしていた。市長の公印を押
印すべき書類に、魅力創生課が独自に製作した浸透印が押印されていた。その書類で決裁が通っていた
ことがあった。(2)2,000 万円以上の動産の買入れは議会の議決を経る必要があるが、議会の議決を経ず
に支出がなされていた。(3)監査委員制度が事実上、機能していなかった。(4)魅力創生課はふるさと納税
業務に加えて、産品発信事業や移住定住事業を担当していたが、予算執行上の事業区分が曖昧になって
いた。
【提言 18】会計手続を正常に戻すべき。
【提言 19】個別外部監査制度を導入し、ふるさと納税業務の監査を実施する体制を整える
べき。
【提言 20】ふるさと納税業務を担当する課はふるさと納税業務に専念するよう、予算執行
上の事業区分の別を明確にし、担当課を分けるべき。
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問題点 7)内部統制やガバナンスに関わる問題と政策提言
(1)全体的に、内部統制やチェック機能が働かず、ガバナンスが不全であった。(2)議会も市のふるさと納
税の実態に疑問をもたず、行政監視機能は十分に機能しなかった。(3)総務省へのふるさと納税に関する
報告内容にも誤りがあった。(4)内部通報相談窓口等の公益通報の仕組みが機能しなかった。
【提言 21】ふるさと納税業務の体制が整い、再開できるかどうかは、新たな独立した委員
会(第三者調査委員会とは別)から意見を聴取するべき。
【提言 22】3 割基準、5 割基準、地場産品基準、総務省への報告内容について、一部に外部
委員を含めた委員会(当調査委員会とは別)が定期的に事後評価を行うべき。
【提言 23】一部に外部委員を含めた委員会(当調査委員会とは別)が不適切な事業者の処
分規則を運用、行政への改善指導を行うべき。
【提言 24】内部通報における外部通報窓口の設置、リニエンシー制度の周知等といった公
益通報制度を十分に機能させる取組を行うべき。
問題点 8)寄附者に対する特殊な取扱に関わる問題と政策提言
(1)市民に返礼品を送付していた。(2)ポイント制を活用していた。ポイント制は、寄附のタイミングと返
礼品送付のタイミングがずれることがある。寄附額の受入と返礼品送付が同じ年度で実施できない場
合、寄附額と支出はずれることになる。そのため、5 割基準を運用する上で望ましい仕組みではない。
とりわけ、無期限のポイント制は、市の債務が継続的に続く問題がある。(3)大口の寄附者が、寄附の際
に返礼品を選ばない場合に、寄附額の 3 割を独自のポイントのように扱っていた。その寄附者が市に直
接、返礼品の送付を希望した場合、市の職員が返礼品の手配などを行っていた。大口の寄附者といえど
も、他の寄附者との扱いが明らかに異なっており、公平性を著しく欠いた仕組みである。
【提言 25】市民の寄附者への返礼品送付は禁止。
【提言 26】ポイント制は使うべきではない。
【提言 27】大口の寄附者の返礼品未選択者債務額は、早急に解消することが望ましい。こ
のような特殊な対応は今後、禁止すべき。
問題点 9)返礼品をともなうふるさと納税制度への復帰時期に関わる問題と政策提言
指定を取り消された洲本市は、取消日から 2 年後の令和 6 年 5 月 1 日から 5 月末日の間に申出書を提出
でき、9 月 30 日までの間に指定を受けることで、制度へ復帰が可能となるが、未利用の温泉利用券やポ
イント等債務残高の消費によっては、5 割基準違反となり、再び指定取消となる可能性がある。温泉利
用券については 3 割基準違反となる可能性もある。復帰のためには、ある程度の寄附総額を集めること
が必要だが、少なくとも令和 6 年度中の制度への復帰は困難だと考えられる。
【提言 28】未利用の温泉利用券やポイント等債務残高の消費がある程度進んだことを確認
してから、返礼品をともなうふるさと納税制度への復帰を行うべき。
5.ふるさと納税制度への政策提言(詳細は第 5 章を参照)
洲本市のふるさと納税問題は、ふるさと納税制度そのものの問題も浮き彫りにした。そこ
で、洲本市のふるさと納税問題を踏まえ、ふるさと納税制度そのものへの政策提言を下記に
示す。
15
(提言 1)市区町村に対する都道府県の監督権限を強化するべきである。
洲本市は兵庫県から何度も指導を受けていたが、根本的な問題を解決しようとせず、総務省の判断に
よって指定取消となった。都道府県は市区町村に対する監督権限を持っていないことが、県による指導
が有効に機能しなかった原因だと考えられる。そこで、ふるさと納税業務に関し、市区町村に対する都
道府県の監督権限を強化するべきである。例えば現在は、国が市区町村に報告を求める形になっている
が、都道府県が市区町村に報告を求めることも可能とするべきである。
(提言 2)地方団体が返礼品となる利用券などを発行すること、返礼品の在庫を抱えること
を禁止するべきである。
洲本市は温泉利用券を発行し、封入と発送作業を行っていた。特定業界の利益にもつながりかねない
業務を地方団体の職員が行うべきではない。また、温泉利用券や玉ねぎスープなどの在庫を抱え、適切
な管理ができていなかった。「おまけ」や牛一頭買いも同様の問題である。地方団体が返礼品となる利用
券などを発行すること、返礼品の在庫を抱えることを禁止するべきである。
(提言 3)梱包費は寄附額の 3 割以内である調達費に含めるべきである。
市場における商品代金には梱包費が含まれており、梱包費を調達費から分離することで、参加事業者
に恣意性が持ち込まれてしまう。梱包費の扱いは曖昧であり、調達費に含めるべきである。
(提言 4)ポイント制の利用を制限するべきである。
ポイント制は、寄附のタイミングと返礼品送付のタイミングがずれることがある。寄附額の受入と返
礼品送付が同じ年度で実施できない場合、寄附額と支出はずれることになる。そのため、5 割基準を運
用する上で望ましい仕組みではない。ふるさと納税サイトが運用するポイント制のうち、特に無期限の
ポイント制には問題が多く、制限するべきである。
(提言 5)ふるさと納税による返礼品の総額をコントロールすべきである。
洲本市は、3割基準、5割基準、地場産品基準に違反してまで、寄附収入を集めるために、返礼品を
送っていた。その上で得られた巨額の寄附収入は、純粋な市民負担ではないことから、ある種のソフト
バジェット問題を引き起こし、非効率または規定を無視した支出がなされた。図 5-1(最終報告書 p.114)
にあるように、ふるさと納税の受入額は右肩上がりで増加しており、1 兆円規模が目前となっている。
その一方、図 5-2(最終報告書 p.114)にあるように、地方税の税収は堅調に推移しているものの、ふ
るさと納税受入額ほどは増加していない。地方税の全体のパイが増えないなか、返礼品競争によって、
限られた税収を奪い合う状況になっているのではないか。特に特定の地方団体では税収の流出が問題視
されている。過度な返礼品競争を抑制するため、返礼品の総額をコントロールするべきである。例えば、
(1)地方団体の財政規模や税収規模などに応じて、返礼品の総額の上限を設定する。(2)個人が申し込める
返礼品の総額の上限を設定する。などの方法が考えられる。

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