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2023.10.27

(日本経済新聞)東京都税調、知事にふるさと納税抜本改革案など報告

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC267BA0W3A021C2000000/

以下、東京都税調の調査報告書からふるさと納税の部分を抜粋しています。
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(要約)
「ふるさと納税」は、2008年に導入された個人の寄附金控除制度で、いくつかの問題が浮き彫りになっています。首都圏などの寄附が限定的であり、地域間の格差が存在しています。また、返礼品競争が激化し、本来の趣旨からかけ離れた寄附が行われています。

さらに、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が不合理であるとの指摘もあります。これは、地方から国への財源の移転を意味し、問題を引き起こしています。

問題を解決するために、抜本的な見直しが求められています。具体的には、返礼割合の引き下げや特例分の控除額の上限設定、返礼品の控除から除外などの施策が提案されています。また、国と地方自治体の連携による見直しや、都民への啓発活動も重要視されています。

要約:「ふるさと納税」には地域間格差や返礼品競争などの問題が存在し、抜本的な見直しが必要です。提案されている解決策には返礼割合の引き下げや特例分の控除額の上限設定が含まれ、国と地方自治体の協力や都民への啓発も重要です。
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(本文)

(2)「ふるさと納税」
ア 「ふるさと納税」の状況と問題点
● 平成 20 年度税制改正により創設された「ふるさと納税」は、受益と負
担の関係という地方税の原則を歪めるとともに垂直的公平の観点でも大
きな問題
● インターネット通販化した実態など、本来は見返りを求めない「寄附」
とはかけ離れた利用が常態化
● 寄附受入額について地方自治体間格差が生じている
● 返礼品調達費のほか様々な費用により、地方自治体が活用できるのは
寄附額の5割程度にとどまり、本来、住民への行政サービスとして提供さ
れるべき財源が地方自治体の外に流出しているとも言える
● 「ふるさと納税ワンストップ特例制度」は、地方から国への財源の移転
と同じであり、不合理な制度
(「ふるさと納税」の状況)
・ 「ふるさと納税」とは、平成 20 年度税制改正において、「生まれ育
ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を
選ぶことができる制度」として創設された個人の寄附金控除制度であ
る。
・ 地方自治体に対して寄附をすると、寄附額のうち 2,000 円を超える
部分について、所得税と個人住民税から一定の上限まで、原則として
全額が控除される。
・ しかし、都は、これまでふるさと納税の対象としての指定の申出を
行っていないため、令和元(2019)年6月1日以後に支出された東京
都に対する寄附金は、「ふるさと納税」の対象外となっている(引き続
き、寄附金税額控除の基本控除の対象にはなる。)。
22
・ 平成 27 年度税制改正における控除限度額の引上げ(個人住民税所
得割の1割から2割へ)と、確定申告不要な給与所得者を対象とする
「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の創設により、利用者及び寄
附額が大幅に増加した。
・ 寄附金獲得を目的とした地方自治体の過剰な返礼品競争等、「ふるさ
と納税」の実施状況をめぐる議論を踏まえ、令和元年度税制改正にお
いて、基準に適合する地方自治体を毎年総務大臣が指定する制度に見
直され、募集に要する費用を寄附金額の5割以下とすること、返礼品
については、返礼割合を3割以下とすること及び地場産品とすること
が定められた。
・ その後、寄附金受領証の発行及び「ふるさと納税ワンストップ特例
制度」の事務費用などを含めると、寄附金額の5割を超過する地方自
治体が見受けられるようになったこと、返礼品についても、「地場産品
基準」に明確には当てはめられないものも出てきたことから、令和5
(2023)年6月にこれらの基準を見直す告示23が出されたところであ
るが、過度な返礼品競争を根本的に是正するには至っていない。
・ 「ふるさと納税」の受入額は増加の一途をたどり、令和4(2022)年
度は全国で約 9,654 億円と対前年度比で約 1.2 倍となり、1兆円に迫
る勢いとなっている24。令和5(2023)年度の住民税控除額も約 6,797
億円と対前年度比で約 1.2 倍となり、東京都と都内区市町村の控除額
は、合計で約 1,688 億円に上る25。
・ 寄附受入額が増加しているが、その中で受入先には偏りが見られる。
受入額が多い地方自治体をみると、上位6団体の合計額が約 961 億円
と全国 1,786 団体の合計額約 9,654 億円の約1割を占めている。また、
上位 20 団体の合計額が約 1,939 億円で約2割を占めている26。

23 総務省告示第 244 号(令和5年6月 27 日)
24 参考資料1「『ふるさと納税』の受入額及び住民税控除適用者数(全国計)」
25 参考資料2「『ふるさと納税』に係る控除額の推移(東京都)」
26 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和5年8月)
23
(「ふるさと納税」の問題点)
・ 「ふるさと納税」による寄附金は、地域の活性化に資するとともに、
自然災害を被った地方自治体の復興支援にも寄与しているものの、多
くの問題点があげられる。
・ そもそも地方自治体の役割は、返礼品に示されるような私的財の提
供ではなく、地域社会を住民が共同で運営していくための行政サービ
スを提供することである。その主要な財源である個人住民税は、地域
社会の費用に応じて負担すべきである。この「受益と負担の関係」は、
地方税の原則である。それに対して、「ふるさと納税」は、居住地の地
方自治体に納めるべき個人住民税を、寄附金を通じて居住地以外の地
域に移転させる仕組みとなっており、受益と負担の関係を歪める制度
である。
・ 近年、各種ポータルサイトで返礼品がインターネット通販化されて
いるなど、本来は見返りを求めないことが前提の「寄附」とはかけ離
れた利用も常態化している。
・ 「ふるさと納税」は、寄附者が高所得者であるほど、所得税と個人
住民税から控除される年間上限額が高くなり、多くの返礼品を受け取
ることができ、垂直的公平の観点でも大きな問題がある。
・ 上記(「ふるさと納税」の状況)で述べたとおり、全国 1,786 団体の
うち、上位わずか6団体が全国の受入額の約1割もの額、また、上位
20 団体が約2割もの額を占めている状況であり、特色のある地場産品
がある地方自治体とそうでない地方自治体との間で大きな格差が生
じている。
・ 「ふるさと納税」を受けた地方自治体では、当該寄附の全額が歳入
となるのに対し、寄附を行った者が住所を置く地方自治体が地方交付
税の交付団体の場合は、控除額の 75%が補填される結果、残る 25%の
減収になり、不交付団体の場合は、控除額全額が減収となる。すなわ
ち「ふるさと納税」は、寄附を受けた地方自治体の歳入を増加させて
いる一方、交付団体も含め、寄附を行った者が住所を置く地方自治体
24
の減収は完全に補填されるわけではない。
・ また、寄附を受け入れている多くの地方自治体で、返礼品調達費の
ほか、仲介サイト委託料、配送費、決済費など様々な費用が生じてお
り、全国の合計で見ると、受入額のうち地方自治体が活用できるのは
5割程度にとどまる27。本来、地方自治体によって住民への行政サービ
スとして使われるべき財源が地方自治体の外に流出してしまってい
るとも言える。
・ 「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の適用を受けた場合、本来
は国税である所得税から控除する税額について、寄附者の居住する地
方自治体の個人住民税から全額控除される。これは地方から国への財
源の移転と同じであり、不合理な制度である。

27 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和5年8月)
25
イ 「ふるさと納税」の抜本的見直しに向けた検討
● 抜本的に見直し、寄附金税制の本来の趣旨に沿った制度に改めるべき
として、以下のような意見が出された
・ 見返りを求めない「寄附」本来の姿に近づけるため、返礼割合を段階
的に引き下げていくべき。特定の事業を応援するクラウドファンディ
ング型への制度の変更も考えられる
・ 垂直的公平の観点から、特例分の控除額に定額で上限を設定するこ
とが考えられる
・ 返礼品は、所得税法第 78 条第2項第1号における「特別の利益」に
当たると考えられ、寄附金控除の対象となる寄附金額から受領した返
礼品に相当する金額を除くべき
・ 「ふるさと納税ワンストップ特例制度」による地方自治体の税収減分
は国によって補填されるべき
・ 地方自治体が寄附先を指定できる制度とすることも考えられる
● 「ふるさと納税」の問題を都民に提起し、理解を促進すること、問題意
識を同じくする地方自治体と連携し、国に対して制度の見直しを求めて
いくことも重要
・ 上記ア(「ふるさと納税」の問題点)で述べたとおり、「ふるさと納
税」制度は多くの問題点を有していることから、抜本的に見直し、寄
附金税制の本来の趣旨に沿った制度に改めるべきである。本調査会で
は、具体的な見直しの方策について検討した。以下、出された意見の
うち主なものを掲げる。
・ 見返りを求めない「寄附」本来の姿に近づけるため、寄附額の3割
以下としている返礼割合を、段階的に引き下げていくことが求められ
26
る。また、「返礼品競争」に象徴されるように、返礼品を前面に出して
寄附者を募るのではなく、具体的な事業及び活動内容を示し、その応
援のために寄附を募るクラウドファンディング型に制度を改めてい
くことも考えられる。
・ 高所得者ほど控除額が高くなり、多くの返礼品を受け取ることがで
きるという垂直的公平の問題を是正するため、「ふるさと納税」に特別
に認められている特例分の控除額について上限を定額で設定するこ
とが考えられる。
・ 国及び地方自治体、その他公益を目的とした事業を行う法人・団体
等に対して行われる寄附については、所得税法第 78 条第2項第1号
により、「特別の利益」がその寄附をした者に及ぶと認められるものは
除かれる旨規定されている。「ふるさと納税」の返礼品は、「特別の利
益」に当たると考えられることから、寄附金控除の対象となる寄附金
額から受領した返礼品に相当する金額を除くべきである。
・ 本来、国が負担すべき税収減が地方自治体に転嫁されている不合理
な「ふるさと納税ワンストップ特例制度」について、地方自治体の税
収減分は、国が補填すべきである。
・ 個人住民税における寄附金制度には、控除できる寄附先を都道府県
及び市町村が条例で指定できる仕組みがある。地方自治体が自らの財
源と責任に基づき自律的な行財政運営を行いつつ、時代の変化に沿っ
た寄附金税制を構築するという観点からは、「ふるさと納税」について
も、国が全国の地方自治体を一律控除できる対象として設定するので
はなく、各地方自治体が「ふるさと納税」の対象とする寄附先を指定
できる制度も考えられる。
・ 「ふるさと納税」の創設後 15 年が経過し、個人住民税から税額控除
がなされているがゆえに、寄附者が居住する地方自治体から他地方自
治体等へ財源が流出することにより、行政サービスに支障をきたす懸
念が生じていること、インターネット通販化した過度な返礼品競争な
ど、本来の趣旨にそぐわない多くの問題が浮き彫りとなっている。都
27
民に問題を周知する取組を強化し、理解を促進していくことが必要と
考える。
・ 「ふるさと納税」制度について、問題意識を同じくする地方自治体
と連携して、国に対して制度の見直しを求めていくことも重要である。
・ ここに掲げた意見などを踏まえて、「ふるさと納税」の抜本的な見直
しに向けて、今後も本調査会として検討を進めていく必要がある。

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株式会社ふるさと納税総合研究所

当社はふるさと納税制度の独立系シンクタンクです。総務省、自治体、関係企業と連携しふるさと納税の価値
や有用性を発信しています。また、総務省様、自治体様、関連企業様への助言やコンサルティング業務を通じて
ふるさと納税の持続的で健全な発展を目指します。
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