大和総研 政策調査部 主任研究員 鈴木 文彦様のレポートです。返礼品をテストマーケティングで活用するという考えは切り口としてユニークであり、この考え方から、今後返礼品市場の飽和とともに多様なニーズが顕在化するとも考えられる。
サマリー
◆「ふるさと納税」の受入額はこの5年で2.6倍となった。人口10万人未満の小都市や町村がけん引役で、上位10%の団体で総額の約6割を受け入れている状況である。個人住民税の納税義務者の約14%が利用しており、税収減の影響は大都市ほど大きい。
◆自治体経営の観点でふるさと納税は税収拡大策と公共事業の2面性を持つ。返礼品を原価とする税収拡大策と捉えれば、その効果は元々自主財源に乏しい小規模自治体ほど高い。また、地元事業者からみれば返礼品は自治体に対する売上であることに着眼し、ふるさと納税を、寄附金を財源とした返礼品発注事業と捉えれば自治体の普通建設事業費や産業経済費と比べてもそん色ないインパクトがある。
◆制度上ふるさと納税は恩返しや応援動機に発する経済的利益の無償供与であり返礼品に対価性はない。とはいえ越境納税に報いるカタログギフトないし節税付きのネット通販と認知されていることは否めない。返礼品を巡る規制強化の過程で、新たな地域資源等の発掘や雇用の創出など地域活性化のコンセプトがふるさと納税に加わった。ついては実態も踏まえ、返礼品事業を地元産品の磨き上げ策として積極活用するのも一考だ。返礼品開発支援事業と組み合わせ、テストマーケティングの一環で積極展開するなどの策が考えられる。この場合、返礼品は試供品のような位置付けとなる。
https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/regionalecnmy/20240123_024210.html
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