レポート

2024.06.18

「ふるさと納税」において自治体が受ける「カスタマーハラスメント」の実態調査レポートを発表しました。

本日、弊社から独自調査による「ふるさと納税」において自治体が受ける「カスタマーハラスメント」の実態調査レポートを発表しました。
以下、PRタイムスの記事をご確認ください。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000104918.html

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「ふるさと納税」において自治体が受ける「カスタマーハラスメント」の実態調査レポートを発表します。

2023年度に全国の約半数の自治体担当者が寄付者からのカスハラを受けていました。カスハラの具体的な内容として返礼品の寄付の再送の要求も最が多くなりました。

カスタマーハラスメント(顧客からの嫌がらせ)は、近年、多くの業界で問題となっており、特にサービス業や公共機関において深刻な影響を及ぼしています。カスタマーハラスメントには、暴言、威圧的な態度、不合理な要求、身体的な攻撃などが含まれ、これにより従業員のストレスが増大し、離職率の増加や職場環境の悪化が懸念されています。

ふるさと納税業界においても、古くから寄付者による自治体職員や関連会社へのカスハラが目に見えない形で横行しているのでは考えられていました。自治体のふるさと納税業務はカスハラを受けやすい風潮にあると思います。以下のとおり整理しました。

1 寄付者は相手が公務員なので少しでも行き違いがあったら平身低頭の謝罪が当然という意識をもっている。
2 寄付者はネットショッピングと同一視し、大手ショッピングサイトと同レベルのサービスを要求してくる。
3 自治体は公的機関という立場上、寄付者に取引停止などといった対抗処置を出しにく い。
4 寄付者は自治体の住民ではなく自治体職員の顔も見えないので、寄付者が要求をしやす い。
5 寄付者が自治体に寄付をしてやっているという上から目線になっており、勘違いを起こしやすい。
6 寄付者がふるさと制度の地場産産品基準は理解していないため、制度上問題がない返礼 品にクレームが入りやすい。

しかし、昨今、カスタマーハラスメントに対する世間の認識は大きく変わりました。お客様は神様だ、というような考えが決して正しいものではないという風に変わってきています。

ふるさと納税業界が2023年度に寄付額1兆円を超えると見込まれており(当社予測)地方創生や地域活性化には最も重要な制度の一つとも言われています。寄付者の過度なカスハラが制度を支える自治体職員に対する負の影響を与えている可能性が考えられます。

そのため、ふるさと納税の健全な発展を目指す弊社が、ふるさと納税寄付者による自治体職員へのカスタマーハラスメントの実態を調査することといたしました。

アンケートの質問と回答は以下のとおりです。

1 2023年度に担当課(室)はお客様(寄付者)からカスタマーハラスメントを受けたことがありますか?

  (回答)
約50%の自治体が1回以上のカスハラを受けたと回答しています。10回以上が14%と高い値を示しています。また、自治体ではなく中間事業者やポータルサイトへのカスハラは14%あります。

2 上記の質問において、受けたことがある、聞いたことがある、と回答いただいた箇所に お聞きします。どのようなカスタマーハラスメントの種類でしたでしょうか?  (複数選択)

  (回答)
返礼品の発送の強要という、ふるさと納税らしいカスハラの内容が最も多くなりました。寄付額の返還の強要も17%を占めています。

3 担当課(室)がこのカスタマーハラスメントによって受ける影響を教えてください。(複数回答)

  (回答)
 職員のモチベーション低下、職員のメンタル低下の割合が高く、職員に精神的な悪影響 を及ぼしているとわかります。影響はないと答えた割合は1%と非常に少ない割合となりました。

4 ふるさと納税カスタマーハラスメントの対策マニュアルはありますか。 

   (回答)
ほとんど全ての自治体で対策マニュアルはありませんでした。作成予定の自治体もわずか1%にとどまっています。

5  具体的なカスタマーハラスメントの事例をご記載ください。(複数可)

 (回答)
カスタマーハラスメントの具体例を多い順に並べています。カスタマーハラスメントの具 体例は多岐にわたりますが、特に返礼品の再送強要や精神的な攻撃が多く見られます。 

 (1)返礼品の再送強要
    寄附者都合で受け取れなかった返礼品に対する再送の要求
    期限切れのクーポン券やチケットの有効期限延長を強要
    返礼品を消費した後での再送要求

 (2)精神的な攻撃や暴言
    公務員への暴言や人格攻撃
    「税金の無駄遣い」「やめてしまえ」などの威圧的な言動
    長時間の電話や繰り返しのクレーム

 (3)寄付金の返還要求
    返礼品が気に入らなかった場合の寄附金返還要求
    返礼品に対する不満からの返還要求

 (4)対応時間や頻度に関する過度な要求
    休日や終業後の対応要求
    特定の時間に連絡するよう強要し、業務に支障をきたす

 (5)配送トラブルや返礼品の品質に関するクレーム
    配送時期が希望通りでないことへの不満
    返礼品の品質に対する過剰なクレームや再送要求
    配送事故によるクレームが自治体に向けられる

 (6)制度や手続きに関する不満や過度な要求
    ワンストップ特例申請の不備に対するクレーム
    手続き上の問題に対する差別的な発言や不満

 (7)返礼品のキャンセルや交換に関する要求
    返礼品のキャンセルができないことに対する不満
    返礼品の交換や返品をしつこく要求

 (8)事業者への過剰な要求や圧力
    返礼品提供事業者への不当な要求やクレーム
    事業者を通じて自治体にクレームを伝える

 (9)特別扱いを求める行為
    他自治体での対応を理由に特別な対応を要求
    自分の立場や職業を理由にした圧力行為

(10)長時間の問い合わせや繰り返しのクレーム
    長時間の電話や繰り返しの問い合わせによる業務妨害
    不合理な要求に対するしつこいクレーム

6 カスタマーハラスメント対策における課題を教えてください。

 (回答)
寄付者のふるさと納税制度への理解促進が最も多く、全国自治体での統一した対策の設定が続きました。この2つの課題で約半数を占めています。

調査結果を受けての弊社の見解は以下の通りです。

ふるさと納税制度は、地方自治体が地域の活性化や財政強化を図るために創設されました。寄付者は、自らが応援したい自治体を選び、寄付を行うことで地域の発展に貢献できる一方、税控除の恩恵を受けることができます。この制度は、都市部への人口流出が続く中で地方の活性化を図り、地方自治体の自立を支援することを目的としています。

しかし、今回の調査で明らかになったカスタマーハラスメントの実態は、制度の目的から逸脱しています。返礼品の再送強要や精神的な攻撃、寄付金の返還要求など、職員への過度な要求は職員の業務負担を増加させ、精神的なストレスを引き起こしています。これらの行為は、寄附者の正当な要求とは言えず、制度の運営を阻害する要因となっています。

ふるさと納税制度の本来の目的は、地域の発展と自治体の自立を支援することにあります。そのためには、寄付者と自治体職員の信頼関係が不可欠です。寄付者には、制度を正しく理解し、地域貢献の精神に基づいた行動が求められます。一方で、自治体は寄付者に対する適切な対応を行うために、職員へのサポート体制を強化することが重要です。

寄付者への適切な対応は自治体職員を守ることになるのはもちろんのこと、返礼品事業者や地域住民と、全国の寄付者との信頼関係の構築にもつながっていくのではないでしょうか。

ふるさと納税総合研究所は、ふるさと納税制度が持続可能な形で発展し、地域の未来を支える制度として機能することを目指しています。寄付者、自治体職員、そして地域社会が一体となって制度の健全な運営に取り組むことで、より良い未来を築いていくことを期待しています。今後も調査結果を活用し、ふるさと納税制度の発展に向けた意識啓発を続けてまいります。

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調査概要

調査期間:2024年5月2日~6月7日

調査対象:全国の地方自治体

調査方法:インターネットによるアンケート調査

調査会社:株式会社ふるさと納税総合研究所

回答数 :212自治体

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株式会社ふるさと納税総合研究所

当社はふるさと納税制度のシンクタンクです。総務省、自治体、関係企業と連携しふるさと納税の価値や有用性を発信しています。また、総務省、自治体、関連企業への助言やコンサルティング業務を通じてふるさと納税の持続的で健全な発展を目指します。

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