記事紹介

2025.05.31

(NHK)岡山 総社市 ふるさと納税のコメを上限超えで調達の可能性

(要約)
岡山県総社市では、ふるさと納税の返礼品として、寄付額6万円に対して地元産コメ60kgを送付していたが、その調達費用が法定上限である寄付額の30%を超えていた可能性があることが判明した。コメの価格高騰により、第三セクター「そうじゃ地食べ公社」が玄米を60kgあたり2万3,000円で調達し、精米や発送費を含めると実質的な調達費は寄付額の約40%に達していたと見られる。損失が発生した同公社に対し、市は補助金を増額して補填したが、市側は「補助金は運営補助であり、ルールには抵触していない」と説明している。これに対し、専門家は「第三セクターを通じた資金の流れが不透明であり、実質的なルール逸脱にあたる」として、制度趣旨に反しているとの見解を示している。

(コメント)
今回の総社市の事例は、形式的には第三セクターを介して返礼品業務を行っているものの、実質的には自治体が3割を超える返礼品の調達費を補助金で負担しており、法定上限の「3割ルール」の趣旨に明確に反する可能性がある。外郭団体や補助金という仕組みを用いて形式的な整合性を保ちながら、実質的に上限を超過するコストを負担している構図は、制度の健全性を揺るがすものである。

このような構造は、2023年に明らかになった佐賀県吉野ヶ里町のケースとも共通しており、当時も中間事業者が差額を一時的に負担しつつ、見返りに高額な業務委託費を受け取っていたことが問題視された。さらに2025年には、岡山県吉備中央町でも「支援金」の名目で調達費が実質的に寄付額の47.7%に達していたことが発覚しており、総務省が報告を求める事態となっている。

これらの複数事例に共通しているのは、名目上はルールを遵守しているように見せかけながら、実態としては中間事業者や地域商社、第三セクターなどを通じてルールを潜脱している点である。こうした手法は、制度に詳しい関係者の間でも以前から懸念されており、制度の信頼性、公平性を著しく損なう恐れがある。

現在は発覚している事例が一部に限られているものの、同様のスキームが他自治体でも運用されている可能性は否定できず、制度全体に潜む構造的課題として向き合う必要がある。補助金や業務委託費といった間接的な支出についても、ガイドラインの明確化と厳格な適用が求められる。今後は、形式的な適合だけでなく、実質的な支出構造に対してもルールの適用を徹底するため、第三者機関による監査・検証体制の強化が急務である。

(ページURL)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/okayama/20250530/4020023531.html

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