レポート

2022.08.17

『分析レポート』令和3年度ふるさと納税寄付額のうち「クラウドファンディング型のふるさと納税実績額」を分析しま した。約300⾃治体にて約160億円の実績がありました。

〜令和4年度ふるさと納税に関する現況調査の結果(総務省発表)を独⾃に分析〜
ふるさと納税の特徴の⼀つは寄付の使い道を選択できることです。ふるさと納税におけるクラウドファンディング型とは、寄付の具体的な使い道に共感し応援したい気持ちから、寄付を募るものです。クラウドファンディング型が本来のふるさと納税のあるべき姿に近いものではありますが、令和3年度ふるさと納税寄付額に占めるクラウドファンディング型の実績は約2%程度であり、しかも令和2年度実績よりその割合は減少傾向にあります。今回は意義は⼤きいものの認知は浅いクラウドファンディング型ふるさと納税に着⽬しました。⾃治体の2割弱の約300⾃治体が実施しており、約160億円の実績となっています。クラウドファンディング型の募集について明確に定義されていないため、⾃治体ごとに集計⽅法が異なる可能性があります。よって、総務省の現況調査の数値もあくまで参考値として捉える⽅がよいかもしれません。

分析の背景

ふるさと納税では通常、ポータルサイトにて返礼品を選択してから寄付の使い道を選択します。寄付の使い道はふるさと納税の本来の姿のために⾮常に⼤切なのですが、寄付額の最⼤化を図るためにUIUXを重視して、使い道の説明のためのスペースがとても⼩さくなっています。⼀⽅で、⼤⼿ポータルサイトやクラウドファンディングサイトを中⼼に、寄付の使い道をメインテーマとし寄付を募っている事例も増加しています。
そこで、クラウドファンディング型ふるさと納税における各⾃治体の取組みや寄付額等を分析することで、クラウドファンディング型ふるさと納税を浸透させ、その寄付額を増加していくための、課題を抽出していきます。

令和3年度ふるさと納税寄付額のうち「クラウドファンディング型のふるさと納税実績額」を分析の主な結果

*前述の通り、総務省発表の現況調査が正確でない可能性がありますので、今回のレポートでは順位付けをしておりません。
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⼤阪府泉佐野市はふるさと納税3.0と名付けた、返礼品提供事業者の新規取組を寄付の使い道に充当するという斬新なアイディアを実施しています。東京都墨⽥区はかなり早い時期から、具体的な事業を寄付の使い道として選択ができていました。その中でも⼦ども⾷堂の⽀援は⼤変有名な事例です。広島市神⽯⾼原町は、⽝の殺処分をなくすことが寄付の使い道の⽬的であり、⾮常に多くの寄付者の共感を得ています。この活動は全国の⾃治体に広がっており、ふるさと納税の素晴らしい成功事例と⾔えます。広島県呉市は戦艦⼤和の主砲製造した⼤型旋盤を消失から守るをテーマに、⼤和ファンの圧倒的⽀持を得ていたように思います。開始1⽇で1億円の寄付が集まりました。(新潟県燕市は2ヵ年の寄付額を実績として記載している可能性がありますので、こちらではコメントを致しません)

クラウドファンディング型ふるさと納税 寄附金額実績(単位:千円)1

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茨城県⿅島市は⿅島アントラーズで有名なスポーツタウンです。未来のアントラーズを⽀えるため、アカデミー⽣のグラウンドを新設することが寄付の⽬的になります。寄付をされる⽅への魅⼒的な返礼品も⽤意されており、熱狂的なファンの⽅により、多くの寄付が集まりました。北海道⼤樹町は宇宙産業に⼒を⼊れており、その夢のある志に寄付額が増加しました。⼤阪府⾼槻市では、関⻄将棋会館の建設を⽬的とした寄附を募り、その話題は⼤⼿メディアでも広がりました。⾼槻市は⽇本将棋連盟と共に将棋振興に取組んでいます。

クラウドファンディング型ふるさと納税 寄附金額実績(単位:千円)2

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静岡県磐⽥市は茨城県⿅島市と同様にサッカーチームへの⽀援であり、熱いファンに⽀えられています。岡⼭県吉備中央町は引退した競⾛⾺のセカンドキャリア⽀援というユニークなものです。

クラウドファンディング型ふるさと納税 寄附金額実績(単位:千円)3

今回の分析を通じて

クラウドファンディング型ふるさと納税の良い事例は数多くありましたが、通常のふるさと納税の寄付額に⽐べると寄付額はまだ少なく、また成⻑も鈍化しています。クラウドファンディングは寄付額のテーマ設定や順位には時間と⼿間がかかりますが、その割には寄付が通常のふるさと納税と⽐べて集まりにくく、集まらなかった時のリスクもあります。そのため、⾃治体としては前向きになれない気持ちも良くわかります。しかし、クラウドファンディング型ふるさと納税の寄付者はその⾃治体とのより強いつながりを求めています。クラウドファンディング型ふるさと納税には寄付額や返礼品以上の意義があります。将来的には、全ての⾃治体がこれに取り組むことが求められるようになるかもしれません。クラウドファンディング型ふるさと納税を浸透させるための課題は①クラウドファンディング型ふるさと納税の定義を明確化すること、②クラウドファンディング型ふるさと納税の取組みや実績がより評価されること、③クラウドファンディングのテーマやストーリーを⾃治体⽬線ではなく寄付者⽬線で検討されること、④通常のふるさと納税においても、寄付申込みは返礼品より寄付の使い道(具体的事業)が優先され表⽰されること、⑤⺠間企業にも実効性があるルールを作ること、と考えます。ふるさと納税制度を持続可能なものとしていくために、⼀過性の返礼品競争に陥ることなく、それ以外の価値や意義にも⽬を向けていきたいものです。

社名:株式会社ふるさと納税総合研究所
本社所在地:⼤阪府⼤阪市
代表取締役:⻄⽥ 匡志(中⼩企業診断⼠、総合旅⾏業務取扱管理者)
事業内容: ふるさと納税市場における調査、研究、コンサルティング、ソリューション提供等
HP:https://fstx-ri.co.jp/


株式会社ふるさと納税総合研究所のプレスリリース⼀覧
https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/104918

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