(弊社コメント)
本レポートは、ふるさと納税制度の構造的課題である「ピットフォール」を税制上の具体的要因から丁寧に分析し、実効的な改善策を提案しており高く評価します。寄付者の納得感を高めるためにも、今後の制度見直しに資する重要な示唆を含む内容です。
(要約)
ふるさと納税は「自己負担2,000円で、好きな自治体に寄付できる」とされています。しかし実際には、制度上の不備から想定より多くの負担が発生するケースがあります。このような「制度の落とし穴」を、筆者は「ピットフォール」と呼んでいます。
このピットフォールが起こる主な理由は、所得税と住民税で寄付金控除の扱いが異なるためです。所得税では「所得控除」として扱われ、住民税では「税額控除」として扱われます。さらに、扶養控除や基礎控除などの金額も、所得税と住民税とで異なるため、課税所得の計算にズレが生じます。
その結果、控除額の計算が正確に一致せず、本来であれば全額控除されるはずの金額の一部が控除されず、寄付者が2,000円以上を実質的に負担してしまう事態が起こります。とくに課税所得がある一定の境界にある納税者にこの問題が多く見られます。
筆者は、こうしたピットフォールを防ぐために以下のような改善策を提案しています:
所得税の控除方式を「税額控除」に変更する
これにより住民税との整合性がとれ、計算のズレが起こりにくくなります。
所得税と住民税で異なる控除(人的控除や保険料控除など)の差を正確に調整する仕組みを整備する
寄付者の課税所得に応じて、ふるさと納税の上限額を事前に適切に算出し、周知する
現在は、控除額を概算で算出する仕組みになっているため、制度利用者の一部に不公平が生じています。筆者は「原則2,000円負担」という制度の信頼性を維持するために、こうした制度改正が必要だと主張しています。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=81842?site=nli
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