【要約】
1. 業務目的・概要
都城市が推進する「肉と焼酎のふるさと・都城」のブランドPRを強化するため、ふるさと納税返礼品の調達・発送・対応等の一連業務を外部事業者に委託する。契約期間は令和8年3月末まで。
2. 委託業務内容
返礼品提供事業者に求められる主な業務は以下の通り:
(返礼品の調達)
法令や市の基準を満たす返礼品の提案・品質管理・安定供給
(返礼品の配送)
全国配送・指定期日厳守・再配送対応・品質保持など
(寄附者対応)
問い合わせ、クレーム、再配送対応(コスト原則事業者負担)
(システム対応)
市指定システムの活用と正確な寄附情報管理
(都城市のブランド構築への協力)
PR梱包資材の使用、新返礼品開発、取材協力など
(ルール遵守)
食品表示・衛生管理・説明会参加・地場産品基準対応など
3. 審査体制と流れ(審査基準・設置基準・フロー)
(一次審査)
書類審査で「ルール遵守」「提案内容」等をチェック(最大100点)
上位5事業者以内(応募数15超で10事業者以内)を選抜
(二次審査)
担当課職員が事業所訪問、現地ヒアリング
外部信用調査会社のレポートを併用
提案の妥当性、衛生管理体制、実現性等を総合評価
4. 応募・提出書類(一覧・作成要領)
参加表明書、会社概要、業務資格証明、技術提案書などに加え、暴力団排除に関する誓約書、都城市税の納税証明、返礼品衛生調査票などを網羅。
提出部数:正本1部、副本5部
作成要領も丁寧に示されており、記載内容・押印・ファイル名の指定まで徹底されている。
【コメント】
都城市の令和7年度ふるさと納税返礼品提供事業者に係る公募は、近年のふるさと納税制度において頻発した**返礼品の不正(例:産地偽装や経費基準違反)**への深い反省と、それを克服しようとする明確な意思が随所に見られる、全国でも極めて先進的な設計といえます。以下の点で特筆に値します。
1. 徹底したガバナンス意識とリスク管理
仕様書や評価基準において、事業者に対し「食品表示法」「食品衛生法」「地場産品基準」など関係法令の遵守を明確に求め、違反時の返礼品停止措置や契約解除の条件まで明記しています。
さらに、配送遅延やクレームに関しても、責任の所在や費用負担をあいまいにせず、寄附者起因以外のトラブルは原則として事業者負担と明示しており、制度運営の信頼性を担保する構造です。
特に注目すべきは、クレーム時に「代替返礼品が他事業者のものであっても都城市は当該事業者への支払を行わない」旨を明文化している点であり、事業者に対する高い説明責任と結果責任が求められていることを示しています。
2. 事業者の実力と誠実さを多面的に測る選考制度
選考フローは、単なる書類審査(一次)にとどまらず、現地訪問を伴う立入調査(二次)と、外部の信用調査会社による財務・信用情報の収集を併用しています。
このような多段階・多角的審査は、単に価格や提案内容だけでなく、現場の衛生管理体制・人的配置・業務継続能力などを実地で確認できる点で極めて優れています。
また、技術提案書の評価項目には、寄附者対応や配送精度に対する「24時間以内のレスポンス体制」や「緊急時対応」など、運用の実務力を問う視点が多く盛り込まれています。
一部の自治体で見られる「提案のきれいさだけを重視する評価軸」とは一線を画し、実務能力と遵法意識の両立が前提条件とされている点は模範的です。
3. 応募事業者に求める提出物の網羅性と精緻さ
提出書類は、会社情報・技術提案に加え、衛生管理チェックリスト、暴力団排除の誓約書、過去3年分の決算情報、納税証明、保険証券など非常に多岐にわたる内容となっています。
これは「事業者を信頼するのではなく、証拠に基づき評価する」姿勢の現れであり、極めて厳格かつ合理的な制度設計といえます。
さらに、暴力団排除の確認にあたっては「役員名簿と誓約書を別途Excelファイルで提出し、指定アドレスへ送信する」といった、運用上のミスやすり抜けを許さない構造が実装されています。この水準の書類要求は、実効性のあるコンプライアンス担保策といえます。
4. 都城市ブランドとの一体化と政策的整合性
この公募は、単なる物流委託や出荷代行を超えて、都城市が目指す地域ブランディングと返礼品戦略を、事業者と共創する構造が特徴的です。例えば以下のような取組が求められています。
寄附者レビューやアンケートへの対応
メディア取材への協力
都城市PRロゴ入り梱包資材の使用
新規返礼品の積極提案
このような設計により、委託事業者は単なる「出荷代行業者」ではなく、「都城市のパートナー」として位置づけられ、自治体・寄附者・事業者の三者が対等に信頼関係を築く構造が形成されています。
5. 他自治体への示唆性・モデル性
都城市は、過去に返礼品における産地偽装問題で一時的な信頼失墜を経験しましたが、本制度はその反省に基づく再発防止策と、制度強化の“完成形”の一つと評価できます。
他自治体が模倣すべき点:
書類審査+現地確認+信用調査の三段階方式
クレーム発生時の責任明示と費用負担ルール
衛生・法令遵守に関する具体的記録・保存義務
返礼品提供事業者への地域ブランディング協力要請
制度の高度化が進むふるさと納税業界において、「信頼を可視化し、制度の持続性を担保する構造モデル」として、都城市の設計は全国的な水準引き上げの起点となり得ます。
【公募ページ】
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/80/75891.html
【資料類】
令和7年度都城市ふるさと納税返礼品提供事業者業務委託事業者募集要項 [PDFファイル/431KB]
表1「技術提案書の評価内容」 [PDFファイル/680KB]
令和7年度都城市ふるさと納税返礼品提供事業業務委託事業者選定審査会設置基準
業務履行に必要な許可・資格取得状況報告書(様式第3号) [Wordファイル/47KB]
営業所等一覧表(様式第5号) [Excelファイル/13KB]
〈法人用〉暴力団排除条例施行規則(様式第6号) [Wordファイル/38KB]
〈法人用〉役員名簿兼同意書 暴力団排除条例施行規則様式第1号 [Excelファイル/34KB]
〈個人用〉暴力団排除条例施行規則様式第2号 [Wordファイル/38KB]
都城市ふるさと納税 衛生関連調査票(自己チェックシート)(様式第7号) [Excelファイル/18KB]
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